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ONDOの活動

前山フィールド講師紹介:谷 光承インタビュー

2021.09.26

こんにちは。ライターの小林繭子です。4月から、フィールド研修講師のみなさんを順番にご紹介しています。今回は、海や川など、水に関わる体験活動をメインに活躍されている谷 光承(たに みつよし)さんにお話をうかがいました。

 

 

——谷さんは普段、どんな活動やお仕事をされているんですか?

 

一つは、NPO法人アーキペラゴに所属し、海の環境問題対策として海ごみ削減に関する活動をしています。ただごみを拾うのではなく、「調査ごみ拾い」を取り入れています。どんなごみが海岸に漂着しているのかを見ていけば、生活の中で出たごみが川を通じて海に来ているということがわかり、自分の生活と海が近いことに気づけます。すると自然と「捨てないようにする」アクションに目が向き、削減活動に繋がるんです。

 

ほかに、個人として行政や一般社団法人かがわガイド協会などからの依頼を受けて、川に関するリスクマネジメント講習会や体験活動の指導者育成、ツアープログラムの作成などにも携わっています。

 

——川のリスクマネジメントとは?

 

川の何が危ないのかを知らないまま、川遊びから事故になってしまうことがあります。川はプールのように管理されているわけではないので、複雑な流れや水理現象によって危険な場所があるんです。どんな場所が危険なのか、身を守るために必要な道具や方法、事故防止や事故が起きてしまったときの対応などをお伝えしています。

 

▲四万十川での指導者向け講習会

 

——ちなみに、川遊びをする人に一つだけ伝えるとしたら、何を伝えますか?

 

ライフジャケットをつけましょう、ですね。ライフジャケットさえつけておけば、守れる命があります。

 

——なるほど……!実は私、子どもの頃に川でおぼれかけたことがあるんです。大人の腰ほどの深さの川でしたが、一部深いところがあって。近くにいた人たちが浮き輪を飛ばしてくれて助かったんですけど、すごく怖かったのを覚えています。

 

それは危なかったですね。水辺で活動するときは、ライフジャケットは必須です。保護者がちょっと目を離している隙にトラブルが起こったり、溺れているのに気が付かないケースも少なくなかったりします。加えて、人の身体の構造として、水中で助けを求めて手を水面から上げると口や鼻が沈んでしまい、声も出せぬまま静かに溺れてしまうこともあるんです。

 

——そういったことを少しでも知っていると、安全性が高まりますね、

 

そうですね。他にも、川に落ちたときの浮き方や、川に流されたときには下流に足を向けて危険を回避するといった流れ方など、何かあったときの対処方法を子ども向けにも、指導者向けにもお伝えしています。

 

▲仁淀川での子ども向けリスクマネジメント教室

 

——ツアープログラムはどのように作っていくのですか?

 

まず、山や川、地域などのフィールドに何度も通ってその場所の魅力を見つけていきます。次に、その魅力に掛け合わせてなにができるのか、どんなアクティビティに繋いでいくのかを考えます。得意分野を持つ人と相談して分担したり、どんな場所が危険なのかを考慮したりする必要性もあります。

 

——専門性を持った方たちが時間をかけて独自のプログラムを作っていくんですね、大変そうです。

 

大変ではありますが、楽しくもあります。香川についてまだまだ知らないことがあるし、フィールドに通ううちに知れるその場所のこと、地域の人や仲間から話を聞いて初めて知ることも数多くあります。

 

——ずっと香川で活動されてきたんですか?

 

高松で生まれ育って、大学から熊本でした。大学では水環境について専門的に学び、川を利用した体験活動や水防災活動など、水に関連した活動に10年間携わりました。16年ぶりに高松に戻ってきたときは、知らないことだらけ。

 

まずはいろいろやってみよう、と海や山に足を運びつつ、香川県主催の「かがわ里海大学」プロガイド養成講座に参加してみたら、講師の一人に谷益美さんがいたり、専門的に活動をされている方々との出会いがあったり。そのご縁が今に繋がっていると感じています。

 

——さて、次は前山フィールドについてお聞きしたいです。最初の印象は?

 

前山のダムは知っていたけれど、初めて訪れたときに車が奥へ奥へと入っていくので、どこまでいくんだろうと思ったのを覚えています(笑)。前山フィールドには山も川もあり、山・川・海といった循環をイメージしやすく、上流域でのいろんな体験ができるいい場所です。加えて、自然の中で自由度高くに使える場所って貴重なんですよ。

 

 

——4月の企業研修では、どのようにプログラムを作ったのですか?

 

事前に講師のメンバーや谷益美さんとフィールドを回り、まずはこの場所でなにができるのかを考えました。細かな内容は企業の方と調整しながら決めていって。私が担当したパートは「川を通して環境を知る」こと。川は、環境を見るときの物差しにもなるんです。新人研修というのを意識して、物差しを持っておくこと、物事を多角的に見ることに重きを置きました。

 

——具体的には、どんなことをしたのですか?

 

今回は3つの方法で川の水環境を調べました。一つ目は、川の中の生き物を調べること。二つ目は川の中に入って感じること。手をつけてみる、嗅いでみるなど自分の五感を使います。三つめは化学の力(キット)を使用して水質調査を実施しました。

 

▲4月の企業研修の一コマ。川の生き物を通して水環境を調査

 

大切にしたのは、「こういうものだ」と説明して理解してもらうのではなく、自らが調べた結果から考察し、それぞれの体験から感じ取ることで自然に理解してもらうことです。

 

他にも、手が入っていない竹林の増加問題や環境に配慮したものづくりをテーマに、竹から食器を作りました。明確には言わずに、まずは竹林の様子や周りを見てもらい、それが問題だと感じてもらうところから始めて。

 

——参加のみなさんのリアクションや、印象的だった様子は?

 

知らない場所で非日常的なことをやれるっていうのは楽しいだけじゃなく、学びも多かったと思います。班に分かれて料理を作るときも「作戦タイム」で効率的においしく作るための流れをチームで考えてもらいました。これは段取りを意識したものですが、言葉で伝えずとも「仕事でも段取りが大事になりそう」というコメントが出て、うれしかったですね。

 

▲班に分かれて段取りを任せ、豚汁を調理

 

——自然の中での体験、気づきを通して学べる機会は貴重ですね。今後の前山フィールドでの予定や、やってみたいことは?

 

企業研修は、クライアントの要望によって組み合わせや構成は無限大だと思います。環境を見る目を養う、物差しを身に着けてもらう、体験活動を通したチームビルディングなど、さまざまな内容を盛り込むことができます。それは多彩な講師たちがいるからこそ。要望に合わせながら前山フィールドでのプログラムを作ることが、これからの楽しみでもあります。

 

今後は、他の講師の方たちと一緒にプログラム作りもしていきたいです。森なら横山さん、といったように各自の得意分野とリンクさせて、オリジナリティがありつつ、相乗効果でより良いプログラムになるんじゃないかなと……。こうやってみなさんとご一緒できることもご縁だなと感じています。一緒にやることで、私自身にも新たな気づきもあると期待しています。

 

——楽しみですね!私自身、なかなか自然の中に飛び込むきっかけがないのですが、一歩入ると本当に気持ちがいいし、思いがけない感覚や気持ちに気づける良い時間になるなぁと……。

 

自然の中での体験と気づきは、子どもから大人まで、誰でも得られるものが沢山あると思います。過ごしやすい秋になりましたし、ぜひ身近な自然の中に飛び込んでほしいです。加えて、慣れてないとわからなかったり、何かあった時に対応できないということがあるので、リスクマネジメントも考慮していただけたらと思います。

 

NPO法人 川に学ぶ体験活動協議会ではどなたでも参加できる講座を開催していますし、河川財団のウェブサイトでは川を安全に利用するための方法が紹介されています。安全を担保した楽しみ方も学んでいけたら、もっとご自身で出かけ、体験することも増えていくと思いますよ!

文=小林繭子(瀬戸内通信社)

 

谷 光承

熊本県で10年間、リバースクールや河川学習館の企画運営、水防災活動に携わり、2016年に香川県へ帰郷。四国を中心に得意分野である「水に関わる自然体験活動や水環境保全」「地域資源や里海を利用したツアー開発及びツアー実施」「海洋ごみの削減」「防災や水難事故防止」の活動に携わる。身近にあるフィールドを活かし、人間生活と自然・生き物とのかかわり方について考えるきっかけづくりを大切にしている。

一般社団法人かがわガイド協会、NPO法人アーキペラゴ、NPO法人白川流域リバーネットワークに所属。RAC(NPO法人川に学ぶ体験活動協議会)トレーナーなど複数資格保有。

 

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