toggle

ONDOの活動

一冊の本を作るまで/PHP研究所 編集者・姥さんインタビュー

2021.11.04

先日発売された谷の新著「チームがまとまる!成果が上がる! ファシリテーション・ノウハウ」。こちらの編集を担当されたPHP研究所の姥(うば)さんに、ライターの小林繭子さんがインタビューを行いました。普段なかなかお聞きすることのない編集のお仕事についてや、この一冊がどのように作られたのかなど、ざっくばらんにお聞きしています。(取材・文=小林繭子/瀬戸内通信社)

 

 

——今日はよろしくお願いします。まずは、編集の仕事について教えてください。

 

本というのは、10万字前後に及ぶ文章によって構成されています。そのボリュームが第一稿からそのまま本になるということはほとんどありません。著者から受け取った材料をできるかぎりおいしく調理するのが私たち編集の仕事です。

 

会社によっても本によっても細かい仕事内容は変わってくるとは思いますが、私の場合は大きく3つ。著者と協議して手直しをする、雑誌と同様 “ゲラ(紙面の見本組)” を組んで構成者と著者と調整をする、全体の進行管理といったところです。

 

具体的には値段、仕様、イラスト挿入や写真、装丁など本に関するあらゆることを、印刷所に持ち込むところまで管理します。借金取りのように原稿を催促したりもします(笑)。本が出た後は営業担当と一緒にプロモーション対応もしますね。

 

——本を作るときは、どのように始まるのですか?

 

いろいろなパターンがありますが、今回はどんな本を作るのかを企画し、社内の合意をとってスタートしました。PHP研究所の場合は編集者がテーマを設定し、著者の候補を考えて企画立案、社内承認を経て著者に打診するという流れが多いです。内容は著者と方向性を詰めていくのですが、細かいところはケースバイケースですね。

 

▲姥康宏さん/今回はオンラインでのインタビューでした

 

——なるほど。ちなみに、この本の始まりは?

 

もともと、人間関係のベースにあるコミュニケーションの本はずっと作っていきたいと思っていました。コミュニケーションというと話し方、笑い方、雑談、プレゼンなどさまざまありますが、特にファシリテーションという言葉が自分のなかでひっかかっていたんですね。ようは自分ができてなかった。世間でも「ファシリテーションできていますか?」と聞いて、できるという人はなかなかいないと思います。調べていくうちに本もさまざま読みましたが、谷さんが圧倒的に良い!と思ったんです。

 

特に良かったのは、とても具体的で、読んだ人が自分ごととして実行できるところですね。今回の本もそうだと思いますが、読者の住んでいるところが地方でも都心でも、どんな職種でも人を選ばずに役に立つ。それってすごいことなんです。迷いなく谷さんだと思ってご本人に相談したら、しゃきしゃきと受けてくださって。

 

▲姥さんと谷さんの初対面/イラスト:谷益美

 

——「コミュニケーションの本はずっと作りたい」とのことですが、それはどうしてです?

 

周りの人とコミュニケーションを取って成果をあげることは、非常に重要なわりに方法論がはっきりしていないし、学校で教えられることもないです。加えて、コミュニケーション系の本は需要が高く、自分の興味・得意分野と市場がマッチしているというのもあります。ただし、ヒットに繋がるチャンスも多くありますが、当然競争も厳しい分野ではあります。

 

——谷さんとの本作りはいかがでしたか?

 

とっても順調でした。ホワイトボードを使いながら谷さんが講釈してくださることもありました。本を一緒に作りながら、私もファシリテーションマスターになっているかも(笑)。この本を作る過程で学んだことが沢山ありました。

 

10万字近い本を一人の人が書くのって大変なことで、「ここはどうなっていますか」「ここは読者がもっと知りたがるんじゃないか」など、編集の仕事では突っ込むことが多々あります。でも、今回はほとんどそういったことはなく——というとまるで私が仕事してないみたいですが(笑)、谷さんは非常に細かく網羅的な目線で書いてくださいましたし、実際に取り組む人がどこで困り、どんな疑問を持つのかまで考えてくれました。ご自身が実践されつつコーチもされているから、視点が多角的なんだと思います。

 

——特に力を入れたところは?

 

谷さんの「リーダーのためのファシリテーションスキル」という著書がすごく良かったんですよね。ファシリテーションの本を買うのは、リーダーが多いです。今回もリーダーの核は押さえたいけれど、前に出た本と被ってしまう。そこでもっと周辺の人、例えば急に司会を頼まれた、後輩ができた、いずれリーダーになろうとしている、そういった方々にも対象範囲を広げてみました。

 

最初は90分くらいで身につくライトな本にしようかと思っていたけれど、これは往々にしてあるのですが、実際に進めていくとコンパクトになる内容ではないとわかって。ちゃんとしたボリュームがあって、入門的ながらこの一冊でファシリテーションを網羅でき、自信が付くような本にしたいと考えました。最終的にはがっつりした形になりましたが、読みやすく仕上がっていると思います。

 

▲初稿のゲラ。赤入れ・修正を重ねて一冊の本へ

 

——谷さんの印象は?

 

お会いする前に本を読んだときは厳しい方だと思っていました(笑)。隙の無い文章の印象があって。実際にお目にかかった時には全然違いましたね。文章のチェックなどはきっちりされているけれど、コミュニケーションはああいうからっとした方で、とにかく明るい。簡潔だし、否定的なことを一切言わないんですよ、これはすごい。とても真似できないです(苦笑)。これはどんなスキルよりもすごいと感じました。その人柄は本の中にも表れていると思います。

 

——本の中でもポジティブなコミュニケーションを意識した内容が盛り込まれていましたね。この本で姥さんが一番大事にされたことはなんですか?

 

神は細部に宿るといわれていますが、編集の仕事はそれに近いところがあって、細かいところがすごく大事なんです。10万字のたった一文字違うだけでも人を傷つけてしまうこともあります。具体的に何が大事かといわれるとなかなか答えにくいというか……すべてが大事なんです。その上で、読んで誰かが不快になったり、傷つくようなものではなく、何らかのいい方向に変わるような一冊を作りたい。それが私のテーマでもあり、一番大事にしていることです。

 

——ちなみに、姥さんにとって一番為になった内容は?

 

ノートのとり方です。詳しくは本を読んでいただきたいので割愛しますが(笑)。「聞いた話のポイントを書きなさい」ってよく聞きますが、実はその方法がわからなくてみんな悩んでいるのだと思います。谷さんはそこを紐ほどいて、具体的な方法を盛り込んでくれました。

 

——最後に一言お願いします!

 

職業柄、コミュニケーションの本を沢山読み、作ってきました。自分ができているなと思っている方ほど思いがけず役に立つと思います。今回この本を通して、なんとなくできているかなと思っていたことも、全然できていないということがよくわかりました。ほとんど自己流なんですよね。ここでちゃんとノウハウ化したことを学べるのは、必ずどこかのシーンで活きてくると思います。ためになる、役に立つ部分は人によってさまざまだと思います。是非一度手に取っていただけるとうれしいです。

 

【谷益美より】

姥さんに原稿をお送りするたびに「ここがこんな風に良かった」と伝えてくださり、心強かったですし、いつも前向きな気持ちで取り組めました。おかげで調子に乗りつつ(笑)、気持ちよく書けたと思います。プチ講義のような時間を挟みつつ本を作りましたが、いつもキラキラした眼差しで聞いてくださっている姥さんが印象的でした。

 

これがいい、ここが面白いと会話しながら一緒にアイデアを出し合い、最後の「事例ストーリー」は姥さんの提案をきっかけに盛り込みました。この本は、人が集まる場での振る舞いだけでなく、会議の事前準備の大切さ、会議を使ってどのようにチームを動かすのか、どう自分をレベルアップしていくのかを含めた網羅的な一冊になったと思います。それは姥さんの編集があってこそ。いろんなシーンで幅広い方のお役に立つ一冊になればうれしいです。

 

*

 

ファシリテーションは、チームや組織の運営、また、より良好な人間関係を構築していくうえでも、非常に役立つスキルです。リアル、オンラインの会議だけでなく、飲み会や「初めまして」の人たちが集まる場などなど、幅広い場面で活きるノウハウが詰まっています。ぜひこの本を使って、効率的に「チームを率いて成果を生み出す」ためのファシリテーション・ノウハウを身につけてください。本の詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

タグ:

トップへ戻る