谷さん、オンラインで大事なことってなんですか?
ONDOの「読み物」コーナー担当のライター・小林繭子です。毎月一つのテーマについて、谷さんにお話を聞いてみることにしました。5月は、新型コロナをきっかけに加速した研修や講座のオンライン化がテーマです。
——コロナ禍前、オンラインでの講座や研修ってありましたか?
初めてZoomを使ったのは、2018年です。早稲田大学の社会人向け講義を担当していたある日、台風で教室参加が難しい方もいて。「どうにかオンライン対応したい」と考えていたら一人の受講生がZoomを教えてくれたんです。その日はオフラインとオンラインのハイブリッド講義に初挑戦したんだけど、その方のおかげで無事トラブルもなく開催できました。
未知のツールを調べながら使ってみるのが面白くて、それまでSkypeでやっていた打ち合せをZoomにしてみたりと、ちょくちょく使うようになりました。2020年以降、多くの企業で研修や打ち合わせがオンライン化し始めたときに、既にある程度使い慣れていたっていうのは良かったですね。
——オンライン会議ツールによって機能が違ったり、日本語での最新の解説がなかったりと、最初の頃は私もかなり戸惑いました。谷さんは抵抗感なかったんですか?
デジタルツールオタクと言えるほど詳しくはないけど、好きなんだよね(笑)。あれこれ使ってみるのが楽しくて。たまたま数年前からZoomを使っていたのに加え、もともとやっていたリアルの研修でもiPadとApplepencilを活用していたので、オンラインにもすんなり移行できました。
——研修や講座って、パワーポイントのスライドを映しながら進めるイメージですが、使わないんですか?
最初の頃からホワイトボードにポイントを書きながら説明し、紙の資料は進行に合わせて一枚ずつ配布して進行していましたが、大きな会場ではホワイトボードの文字が見えにくいのが悩みでした。そこで2016年にiPadとApplepencilを導入して、その場でiPadの資料に手書きした画面をプロジェクターに投影するようになったんです。
iPadでは、色を使いながら絵も文字も手書きができるし、終了後にPDF化して共有もできます。デメリットとしては、複数枚設置することができるホワイトボードとは違い、一画面しか投影できないこと。プロジェクターを使いつつ、ホワイトボートに研修のゴールを書いて、視界に入るようにすることもあります。
——講座を進めながら資料が完成していくんですね。ライブ感がある分、ドキドキしません?
準備した通りの原稿で進行するっていうことが苦手なんです。準備しても、現場の雰囲気を見て、がらっと方向転換することもあります。参加者に何を期待しているのかを聞いてニーズに応えつつ、双方向で進めるライブな進め方が好きですね。
とはいえ、一日研修で全体の予定や現在地点がわからないと、不安になる方もいらっしゃって。パワーポイントのスライド資料がなかったのもあって、最初の頃は「谷さんの講座って面白いけど、何をやったのかあんまり残ってない」って言われることもありました。ショックだったけど、要所要所でまとめを挟んだり、順を追って進めたりといった、分かりやすい伝え方ができてなかったなぁと。
それに気付いてからは講座の時間割を最初に提示したり、ところどころにまとめを入れるようにしました。iPadを使っての進行は、ある程度流れを最初に決めておきながらも、会場の状況に合わせて変えることもできて、ライブ進行が得意な自分に合っていたんです。このスタイルがなかったら、近年のオンラインでの研修対応も、どこかでつまずいていたかもしれないですね。
——オンラインで大切なことは?
運営目線でいうと、音声をどう通すかが一番大事。スライドが見えにくいときは事務局からメールで送付するなどの対応ができますが、音が聞こえないと何も伝わらず、参加者は困ってしまいます。極論、音声さえ届けばなんとかなるともいえます。
なので、必ずリハーサルをしています。事前に色々と試したからこそ気づくこともありますね。オンラインで何名か話す座談会形式なら、どこにマイクとスピーカーを設定し、どれくらいの音声ボリュームで、どの方向に向かって話すのがベストなのかや、カメラ位置も細かくチェックします。
当日の通信状況など、ネットワークが落ちたらどうカバーするのかも考えておきます。スマホがつながればテザリングで、打ち合わせだけなら電話でなんとかなります。
——そこまで考えているんですね……!
オフラインではプロジェクターの接続不具合があっても、資料を印刷するなど、現地にいればなんとでもカバーできるんです。でも、オンラインでは接続が切れてしまうと自分の存在が消えてしまいます。「リハって必要?」と聞かれることもありますが、必須です!
——毎回事前準備には時間をかけています?
オンラインに限らないことですが、研修でも、ワークショップでも、特に初めての方とは回数を重ねて打ち合わせをします。例えば、「ワールドカフェをやりたい」という依頼をいただいた場合、お受けする前に細かいヒアリングを行います。そもそもなぜワールドカフェなのか、その先にどういう状態をつくりたいのか、参加者についてなど、詳しく伺うんです。最終的に、より良い形を見つけてワールドカフェじゃなくなることもあります。
事前打ち合わせは、やればやるほど時給が下がることになるんですが(笑)、しっかりやるから当日も失敗が少ないし、依頼主の方と一緒に考えながら作っていけるので、より良いものになっていると思います。
——ところで、ONDOのオフィスにあるガジェットたち、すごいですね。何があるんですか?
カメラ2台、モニター、マイク、ライト、最大4台のカメラを切り替えられるスイッチャーですね。スイッチャーを活用すれば後の動画編集が最低限で済み、少しテロップを入れるくらいで動画が完成するから、めちゃくちゃ楽なんです。ビデオ講座の作成依頼をいただくこともあるんですが、ほとんど編集なしの一発撮りで作れています。今は机の上と顔を映すカメラの2台、iPadの画面を切り替えられるようにしていて、iPadでリアルタイムに何かを描きつつ、画面ワイプで顔を小さく出したりもできます。
——すごい、撮影しながら編集もできちゃうんですね。ここまで揃えたきっかけは?
ビデオ講座で喋っているのを見るだけって退屈だな~って思って……。どうせなら、喋っている姿以外にも、iPadで書き込んでいる資料や手元が映ったら面白いんじゃない?とか色々思いついて、道具に詳しい友人にアドバイスを貰って買い揃えました。使い方は、ネットで調べてあれこれ試しながら覚える、という感じです。
「初めて何かをする」っていうことが好きなんです。とりあえず使ってみたらわかることって多いし、ガジェットに関しては必要だと思うものはとりあえず買ってみます。合わなかったらメルカリなどで売ることもできますし(笑)。Zoomを導入したときも、合わなかったら無料に戻せばいいや、と思って早い段階で有料アカウントを契約しました。
——無料でいろいろと試してからじゃなくて、先に有料版で試してみるんですね。
体験してみないとどんなものかわからないし、払ったお金以上のリターンを得ることが多いんです。やってみてわかったことを講座に盛り込んだりと、次のネタになることもあります。
——谷さんのカメラ、すごくきれいに映るというか、いい雰囲気になりますね。
でしょ~!オンラインってずっと自分の顔が映るから、ちょっとでも良い感じに映るってめちゃくちゃ大事。テンションがあがるし、表情やしぐさ、話す癖なんかも改善されたと思います。「あ、自分ええ感じやん」と思わせてくれるってとてもとても大事でなので、良いカメラはおすすめです(笑)。
文=小林繭子(瀬戸内通信社)
2021年4月記事:谷さん、コミュニケーションを学ぶって、あざとくないですか?